て‐びき【手引(き)】例文一覧 18件

  1. ・・・ いつ、私は、あの人の手引をして夫を討たせると云う約束を、結んでなどしまったのであろう。しかしその約束を結ぶと一しょに、私は始めて夫の事を思出した。私は正直に始めてと云おう。それまでの私の心は、ただ、私の事を、辱められた私の事を、一図にじっ・・・<芥川竜之介「袈裟と盛遠」青空文庫>
  2. ・・・ 盲にして七十八歳の翁は、手引をも伴れざるなり。手引をも伴れざる七十八歳の盲の翁は、親不知の沖を越ゆべき船に乗りたるなり。衆人はその無法なるに愕けり。 渠は手も足も肉落ちて、赭黒き皮のみぞ骸骨を裹みたるたる空に覆れたる万象はことごと・・・<泉鏡花「取舵」青空文庫>
  3. ・・・省作はおはまの手引きによって、一日おとよさんと某所に会し今までの関係を解決した。 お互いに心の底を話して見れば、いよいよ互いに敬愛の念がみなぎり返るのであるが、ままならぬ世のならいにそむき得ず、どうしても遠い他人にならねばならない。男同・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  4. ・・・ 小心な男ほど羽目を外した溺れ方をするのが競馬の不思議さであろうか。手引きをした作家の方が呆れてしまう位、寺田は向こう見ずな賭け方をした。執筆者へ渡す謝礼の金まで注ぎ込み、印刷屋への払いも馬券に変り、ノミ屋へ取られて行った。つねに明日の・・・<織田作之助「競馬」青空文庫>
  5. ・・・ 初学者はこの書によって入門し、倫理学の根本課題の所在と、その解決の諸方途との手引きを得ることを自分は薦めたい。 私のこの稿は専門の倫理学者になる青年のためではなく、一般に人間教養としての倫理学研究のためであるが、人間の倫理的疑問及・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  6. ・・・そして王に手引してもらって、手取り千六百金、四百金を承奉に贈ることにして、二千金で売付けた。時はもう明末にかかり、万事不束で、人も満足なものもなかったので、一厨役の少し麁鹵なものにその鼎を蔵した管龠を扱わせたので、その男があやまってその贋鼎・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  7. ・・・棚曝しになった聖賢の伝記、読み捨てられた物語、獄中の日誌、世に忘れられた詩歌もあれば、酒と女と食物との手引草もある。今日までの代の変遷を見せる一種の展覧会、とでも言ったような具合に、あるいは人間の無益な努力、徒に流した涙、滅びて行く名――そ・・・<島崎藤村「並木」青空文庫>
  8. ・・・それが手引となって、東京、横浜、横須賀なぞでは、たちまち一面に火災がおこり、相模、伊豆の海岸が地震とともにつなみをかぶりなぞして、全部で、くずれたおれた家が五万六千、焼けたり流れたりしたのが三十七万八千、死者十一万四千、負傷者十一万五千を出・・・<鈴木三重吉「大震火災記」青空文庫>
  9. ・・・長になって三年目に病歿したので、津島は老母の里心を察し、亡父の遺産のほとんど全部を気前よく投じて、現在のこの武蔵野の一角に、八畳、六畳、四畳半、三畳の新築の文化住宅みたいなものを買い、自分は親戚の者の手引きで三鷹町の役場に勤める事になったの・・・<太宰治「家庭の幸福」青空文庫>
  10. ・・・盲目なる手引よ、汝らは蚋を漉し出して駱駝を呑むなり。禍害なるかな、偽善なる学者、外は人に正しく見ゆれども、内は偽善と不法とにて満つるなり。禍害なるかな、偽善なる学者、汝らは預言者の墓をたて、義人の碑を飾りて言ふ、「我らもし先祖の時にありしな・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  11. ・・・それで、この映画は、まだ馬というものを知らない観客に、この不思議な動物の美しさとかわいさをいくらかでも知らせる手引き草として見たときには立派に成効したものと言ってもいいかと思われるのである。     十二 忠犬と猛獣 これも・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  12. ・・・熊本で漱石先生に手引きしてもらって以来俳句に凝って、上京後はおりおり根岸の子規庵をたずねたりしていたころであったから、自然にI商店の帳場に新俳句の創作熱を鼓吹したのかもしれない。当時いちばん若かったKちゃんが後年ひとかどの俳人になって、それ・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  13. ・・・瞽女といえば大抵盲目である。手引といって一人位は目明きも交る。彼らは手引を先に立てて村から村へ田甫を越える。げた裾から赤いゆもじを垂れてみんな高足駄を穿いて居る。足袋は有繋に白い。荷物が図抜けて大きい時は一口に瞽女の荷物のようだといわれて居・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  14. ・・・第二、読本 もっとも易き文章にて諸学の手引、初歩ともなるべき事を説き、あるいは『モラルカラッスブック』などとて、脩心学の入門を記したる小冊子も、読本の内にあり。たいてい絵入りなり。この時また文法書を学ぶ。文法を知らざれば、書・・・<福沢諭吉「学校の説」青空文庫>
  15. ・・・ 私は全くへりくだった心持でいわば私たちの知らなさの程度を明らかにすることで、このリストがいつか段々補足され質を高められたものとなり、いくらか有益な読書の手引きとなって若い婦人たちがそのより年若い弟妹たちに与えるにたえるものとなることを・・・<宮本百合子「科学の常識のため」青空文庫>
  16. ・・・ 文学へ新人の爽やかな跫音を、と求める気分は濃厚となって、新人推薦、発見の方法は幾多の賞を手引きとして講じられた。抑々日本の現代文学の世界で、こんなに幾種類もの賞の流行が、文化統制の気運とともに組織された文芸懇話会賞から始ったというのは・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  17. ・・・が、各種の読書手引にも紹介されている本である。日本をこめた世界思潮を知る上に役立つ本にちがいないけれども、すこし読みにくい編輯方法である。一冊の中に一つの題目がまとめられていないで、全十二巻のうち、たとえば文芸復興については一巻、三巻、五巻・・・<宮本百合子「世代の価値」青空文庫>
  18. ・・・そして一九三三年十二月、スパイの手引によって検挙され、一ヵ年間留置場生活を経て、未決におくられた。往復書簡は自然、その一年間の出来事にもふれているので、「十二年の手紙」とされている。   一九五〇年六月五日〔一九五〇年六月〕・・・<宮本百合子「はしがき(『十二年の手紙』その一)」青空文庫>