あなた‐こなた【彼方此方】
[代]指示代名詞。あちらこちら。あれこれ。「君の御身には、かの一節の別れより、—もの思ひとて」〈源・若菜下〉
あ‐べか◦めり
[連語]《「あるべかるめり」の音変化形「あんべかんめり」の撥音の無表記》あるようである。ありそうに思われる。「人のそねみ—◦めるを、いかで、塵(ちり)も据ゑたてまつらじ」〈源・若菜上〉
あま‐がつ【天児/天倪】
形代(かたしろ)として幼児のそばに置き、災厄を移し負わせる人形。後世は、幼児のはう姿をかたどった這子(ほうこ)をもいう。「ちごうつくしみし給ふ御心にて—など御手づから作り」〈源・若菜上〉
あら◦まほし
[連語]《動詞「あり」の未然形+希望の助動詞「まほし」》 1 居たい。ありたい。「かかるついでにしばし—◦まほしくおぼしたり」〈源・若菜上〉 2 あってほしい。居てほしい。「少しのことにも先達(...
あらわ【露/顕】
[形動][文][ナリ] 1 むき出しであるさま。はっきりと見えるさま。「肌も—な服」 2 物事が公になるさま。表面化するさま。「矛盾が—になる」「内情が—になる」 3 気持ちなどを、隠さずに公然...
いい‐あつ・む【言ひ集む】
[動マ下二]語ったことや詠んだ歌などを、書き集める。「かく世の例(たとひ)に—・めたる昔語りどもにも」〈源・若菜下〉
いい‐わた・る【言ひ渡る】
[動ラ四] 1 言い続けながら月日を過ごす。「年ごろさばかり忘れがたく、恨み—・り給ひしかど」〈源・若菜下〉 2 しきりに求愛する。言い寄り続ける。「頼みて—・りけるに、猶(なほ)逢ひ難きけしき...
言(い)えば更(さら)なり
わざわざ新たに言う必要もないほどだ。もちろんである。言うも更なり。「目もあやに飾りたる装束有様—」〈源・若菜下〉
いき‐ま・く【息巻く】
[動カ五(四)] 1 激しく言いまくる。気炎をあげる。「向かう所敵なしと—・く」 2 息づかいを荒くして怒る。ひどく憤慨する。「絶対に許さないと—・いている」 3 勢力を振るう。幅をきかす。「坊...
い‐し【倚子】
腰掛けの一。宮中では貴人高官が使用を許されたもの。形や背もたれ・ひじ掛けの有無などは身分により違いがあった。「螺鈿(らでん)の—立てたり」〈源・若菜上〉 [補説]中世以降、禅僧が多く使い、唐音を...