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・・・「何だかちっとも分らねえが、赤目鰒の腸さ、引ずり出して、たたきつけたような、うようよとしたものよ。 どす赤いんだの、うす蒼いんだの、にちにち舳の板にくッついているようだっけ。 すぽりと離れて、海へ落ちた、ぐるぐると廻っただがな、・・・
泉鏡花
「海異記」
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・・・「――いり海老のような顔をして、赤目張るの――」「――さてさて憎いやつの――」 相当の役者と見える。声が玄関までよく通って、その間に見物の笑声が、どッと響いた。「さあ、こちらへどうぞ、」「憚り様。」 階子段は広い。―・・・
泉鏡花
「木の子説法」