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・・・動けば彼の腹は空き始めた。腹が空けば一日十銭では不足である。そこで、彼は蒼ざめた顔をして保護色を求める虫のように、一日丘の青草の中へ坐っていた。日が暮れかかると彼は丘を降りて街の中へ這入って行った。時には彼は工廠の門から疲労の風のように雪崩・・・
横光利一
「街の底」
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・・・その色の好きな人は、あるいは好きな間は、その色が見えるというだけで喜びを感じるであろうが、その色のきらいな人、あるいは飽きてきた人は、その色がありのままの物の姿を見るのにひどく邪魔になることを痛感させられる。それを感じはじめると、どの色とい・・・
和辻哲郎
「歌集『涌井』を読む」