・・・ 番傘を、下から煽る風にふき上げられまいと母の上にかざして何百段かの石段をのぼりつめたとき、更に高い本殿まで昇って椽側に腰をおろしたとき、私のこころは憤りでふるえるようであった。子を無事にかえしてほしいと思う母親、許婚の命があるようにと・・・ 宮本百合子 「琴平」
・・・本年も終りに近づいてから、舟橋聖一などによって、目下のところでは未だ方向の明らかにされていないインテリゲンチアの行動性を煽る「リベラリズム」という立場が主張されて、「ダイヴィング」などという作のでてきていること、支配階級の大衆的文化政策とし・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・いかがわしい出版社が、まったくインフレーションにともなう現象としてどんどんできて、妙な雑誌がやたらにできて、それらがみんな紙を買い煽る。ですから、日本の民主主義文学のために意義をもつ『新日本文学』は編集責任者たちにたいへんな努力と心痛とをさ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・生が愛であることを、愛が苦しみであることを、苦しみが愛を煽ることを、愛が生を高めることを、お前のその顔に刻みつけろ。 和辻哲郎 「ベエトォフェンの面」
出典:青空文庫