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・・・大川に臨んだ仏蘭西窓、縁に金を入れた白い天井、赤いモロッコ皮の椅子や長椅子、壁に懸かっているナポレオン一世の肖像画、彫刻のある黒檀の大きな書棚、鏡のついた大理石の煖炉、それからその上に載っている父親の遺愛の松の盆栽――すべてがある古い新しさ・・・
芥川竜之介
「開化の良人」
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・・・たま/\そこに子供さん達が居合して、「なにを、お母さんや、お姉さんは、あんなに感心なさるのだろうか?」と、その様子で察して、騒ぐのをやめて、傍に来て坐り自分も耳を傾ける。たとえ読まれる事柄の細かな筋はよく分らなくとも、部分、部分に、空想・・・
小川未明
「読んできかせる場合」