・・・をやって支配階級の大量的殺人を援助し、ストライキを逃げ、階級意識を眠らす出征兵士慰問金をかき集める役をつとめるとしたら、果してわれわれは何事をなし得るであろうか! 地方の農村・小都市で封建性は強く日常生活の些細な感情の中にまで残っている・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・兵士への慰問というときにも、女というものが、酒、煙草、絹の概念で、添えられるもう一品に止っているということに、私たちの心持は満足しない。私たち女の心にある慰問は、もっと歴史の相貌に根ざしたところから惻々と発しているのである。また、女自身が、・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・となった人々への哀悼、遺族への慰問の責任を表明した。けれども、当時あの新聞をよんだ一般市民は、阿佐操縦士の妹きくえさんの言葉をどう受けとっただろう。きくえさんは、涙に頬を濡して、「無電がついていなかったんでしょうか。無電があったら、兄は決し・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・また前線を訪問した工場からの慰問隊の、断片的な手記しかなかった。ソヴェトの作家たちは、赤軍、赤色艦隊の軍事活動にうとかったと同様に、更により深い意味をもつその平和建設の能力と功績を理解していなかったのだ。 研究委員会は、赤色陸海軍に対す・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・三浦環まで満州へ慰問に行かなければならない日本であったのだから。どの程度経済事情がわるかったろう? 文学の人のように、いい作家でも貧乏し、いじめられつづけて来たのだろうか。それとも、戦争によって益々卑屈に商業性を守ろうとした大資本に買われて・・・ 宮本百合子 「俳優生活について」
『輝ク』の慰問号を拝見して感じたことの第一は、人を慰める、特に平常と異った事情にある前線の将士を真実に慰めるということは、実に、むずかしいということです。『輝ク』のこの号の共通な感情として、どっちかというと慰めるということの・・・ 宮本百合子 「身ぶりならぬ慰めを」
・・・満州の戦のことばっかり書いて、慰問金寄附の金額がさながら浅草観音の寄進帳のようにズラリとすられている。世界には満蒙事件のほかにいろいろ大切なことが起っているでしょう。日本の中にだって手近いところで市電の大首キリが迫っているし、八幡製鉄所に千・・・ 宮本百合子 「「モダン猿蟹合戦」」
・・・出征軍人の見送り、出迎え、傷病兵慰問、官製婦人団体が組織する細々とした労働奉仕――例えば米の配給所の仕事を手伝うために、孔の明いた米袋を継ぐために集るとか、婦人会が地区別に工場へ手伝いに出るとか、陸軍病院へ洗い物、縫物などのために動員される・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・島原征伐がこの年から三年前寛永十五年の春平定してからのち、江戸の邸に添地を賜わったり、鷹狩の鶴を下されたり、ふだん慇懃を尽くしていた将軍家のことであるから、このたびの大病を聞いて、先例の許す限りの慰問をさせたのも尤もである。 将軍家がこ・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫