・・・日本婦人協力会には、検事局の人々にとって殆ど内輪の、因縁浅くない故宮城長五郎氏夫人宮城たまよが主要な一員として参加しているのである。遠慮なく警告してもよかったろう。 責任を問うという意味での警告であるならば、おのずから区別の過程をふまえ・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・ 切りつめた暮しを目の前に見て、自分のために起る種々な、内輪のごたくさの渦の中に逃げられない体をなげ出して、小突きあげられたり、つき落されたりする様な眼に会って居なければ、ならない事は、しみじみ辛い事であった。 こんな、憂目を見る基・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
はじめて大町米子さんにあったのは、いまから十年ばかりまえのことであった。友達から紹介されて、うちへいらした。夏の夜だったとおもう。団扇をつかいながらいろいろ話がでて、大町さんはだんだん自分のくるしい境遇のことや、結婚の問題・・・ 宮本百合子 「大町米子さんのこと」
・・・そして人々は煙を団扇で追いながら、とりとめもなく夏の夜を話し更かすのです。何か怪談のような話題でも出ますと、つい杉葉のきれたのも忘れてしまって、攻め寄せてくる蚊軍に驚いて「どうだいちっとくべようじゃないか」と云う風にまたくべ出したりするよう・・・ 宮本百合子 「蚊遣り」
・・・ 文学の賞の今日のありようについても、単に皮肉な毒舌や内輪のごたつき話に対する嘲笑をもって終らず、謂わば文学における自分の努力の一つ一つを、今日の文学の質をよりましなものとしていつしか変えてゆくべきものとして、責任深く感じる心持が大切と・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・誰かにあてた手紙の中に、チェホフらしい内輪な云いぶりで「彼の本当の道を発見させてやりたい」と書いた。 われわれにとって意味ふかく考えられるのは、このチェホフのこの単純に云われているが重大な言葉が、今日のメイエルホリドにとっても、まだ決定・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・そのような内輪のメモにもなり仲通りの何処かで何か陶器の気に入ったのが目につくと、その場所、見つけた日づけ、時にはその陶器のスケッチなどもこの手帳にされました。 一日のうちに、父は幾度、手帳を出しかけたことでしょう。実にまめに、何でもかき・・・ 宮本百合子 「父の手帳」
・・・の疑問も人間完成の要求も本質的には達せられず、結局、面は違うが、同じ小市民的層の内輪をめぐっていることになる。作者は当時、その微妙な要点を洞察するだけの客観的な社会性を自身の現実観察の眼に具えて居なかった次第でした。 しかし、この作品は・・・ 宮本百合子 「「伸子」について」
・・・ これらの文学的成功は、幾分でもバルザックの経済危機を緩和したであろうと誰しも推察するのであるが、彼の場合実際生活は決してそのように内輪に運転されなかった。一部をやっと返済したかと思うと、一方では負債の増大するようなことばかりが起った。・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・その内輪で、どちらかと云えば神経質な交渉の反覆を日頃経験している人々が、そういうこまかい利害からは埒外にあって、しかも今日の世の中では文学の仕事にたずさわる者に対して高飛車な朗らかさと率直さを示し得る背景の前にいる人々を眺めたら、一応それら・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
出典:青空文庫