･･･ おとよさんの行為は女子に最も卑しむべき多情の汚行といわれても立派な弁解は無論できない。しかしよくその心事に立ち入って見れば、憐むべき同情すべきもの多きを見るのである。 おとよさんが隣に嫁入ったについては例の媒妁の虚偽に誤られた。お･･･ 伊藤左千夫 「隣の嫁」
･･･ その後の私の汚行に就いては、もはや言わない。ぬけぬけ白状するということは、それは、かえって読者に甘えている所以だし、私の罪を、少しでも軽くしようと計る卑劣な精神かも知れぬし、私は黙って怺えて、神のきびしい裁きを待たなければならぬ。私が･･･ 太宰治 「善蔵を思う」
･･･どうか、貴下は、御自身の容貌の醜さや、過去の汚行や、または文章の悪さ等に絶望なさらず、貴下独特の哀愁感を大事になさって、同時に健康に留意し、哲学や語学をいま少し勉強なさって、もっと思想を深めて下さい。貴下の哀愁感が、もし将来に於いて哲学的に･･･ 太宰治 「恥」
出典：青空文庫
