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・・・この子は、なかなか、おしゃまだね。」 知識人のプライドをいたわれ! 生き、死に、すべて、プライドの故、と断じ去りて、よし。職工を見よ、農家の夕食の様を覗け! 着々、陽気を取り戻した。ひとり、くらきは、一万円費って大学を出た、きみら、・・・
太宰治
「HUMAN LOST」
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・・・またおしゃまな娘美登里の住んでいた大黒屋の寮なども大方このあたりのすたれた寺や、風雅な潜門の家を、そのまま資料にしたものであろうと、通るごとにわたくしは門の内をのぞかずにはいられなかった。江戸時代に楓の名所といわれた正燈寺もまた大音寺前にあ・・・
永井荷風
「里の今昔」