・・・これに限らず、すべての点で彼が非常に卓越した人間であるということを、気が弱くてついおべっかを言う癖のある私は、酒でも飲むとつい誇張してしまって、あとでは顔を赤くするようなことがあるので、淋しくても我慢してひとりで飲む気になるのである。「・・・ 葛西善蔵 「遊動円木」
・・・私はこの習慣については、実は内心大いに閉口しているのだが、しかし、これとても、私のつまらぬおべっかの報いに違いないのだから、誰をも恨む事が出来ない。以下はその日の、座談筆記の全文である。括弧の中は、速記者たる私のひそかな感懐である。・・・ 太宰治 「黄村先生言行録」
・・・あなた達は、お金持の奥さんに、おべっかを言っていただけなんだ。そうして奥さんの一生を台無しにしたのです。あの人をこっぴどくやっつけた男というのは僕です。」「そんなに、つまらない絵でもないでしょう。」老画伯は、急に自信を失った様子で、「私・・・ 太宰治 「水仙」
・・・のなかの最も皮肉で愉快な場面、よだれをたらした赤坊のラマに帝国主義国の将軍が勲章をつけてお辞儀したり、おべっかつかったりする場面、反宗教的な場面をあらかた切ってしまってあった。暖いぷかぷかな場席へ、所謂シークなパリの中流男女、金をつかいに来・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・一方のより金の力のつよい側に一方の悪口をいったりするのは、おべっかか、お追従として、日本の気質が下劣と認めている態度である。 法学博士横田喜三郎氏が、『時論』五月号の評論に詳細に述べておられるとおり、第二次大戦で直接国土に戦禍をうけなか・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・以下 p.83 p.85p.85 しかし一方民衆におべっかを使うなどということは、おれの力じゃ到底出来ん。アメリカじゃそれが必要だそうだが――p.86 おれはフランスよりアメリカの方をすきになるわけにはゆかん。おれにとっては・・・ 宮本百合子 「「緑の騎士」ノート」
出典:青空文庫