・・・ この初期の二つの評論にはっきりあらわれているように階級の歴史的経験を、自身の実感としないではいられなかった著者が「評価の科学性」からのち、益々解放運動とその文学運動の中心課題にてい身してゆくにつれ、論策も主としてプロレタリア文化・文学・・・ 宮本百合子 「巖の花」
・・・けれども、時局の要求する生産拡充への大努力によって重工業、化学、食料、織縫などには、大量に女の力が吸収されつつある。全国に十万人も熟練工が不足を告げているという事実は、今日の大問題とされているのである。処々の大工場、実務学校などで熟練工の養・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ 作家、記者は、彼等の手帖が濡れると紫インクで書いたような字になる化学鉛筆とをもって、やっぱり集団農場を中心として新生活のはじめられつつある農村へ、漁場へ、辺土地方(中央亜細亜へ出かけた。作家の団体は有志者を募集し、メイエルホリドの若手・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・潮流の工合で、南洋からそういう植物をのせたまま浮島が漂って来て、大仕掛の山葵卸のようなそれ等の巖のギザギザに引っかかったまま固着したのか、または海中噴火でもし、溶岩が太平洋の波に打たれ、叩かれ、化学的分解作用で変化して巖はそんな奇妙なものと・・・ 宮本百合子 「九州の東海岸」
・・・物理化学学校の実験室での、八時間。その一日の仕事の帰り途、市場へまわって夫婦は一緒に夕飯のための材料を買いました。家事の雑用を最も手まわしよくやって三時間。それからマリヤの夜の時間は家計簿の記入と中等教員選抜試験準備のためにつかわれて、朝の・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・自然科学はどうだ。物質と云うものでからが存在はしない。物質が元子から組み立てられていると云う。その元子も存在はしない。しかし物質があって、元子から組み立ててあるかのように考えなくては、元子量の勘定が出来ないから、化学は成り立たない。精神学の・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・しかし物質があって、元子から組み立ててあるかのように考えなくては、元子量の勘定が出来ないから、化学は成り立たない。精神学の方面はどうだ。自由だの、霊魂不滅だの、義務だのは存在しない。その無いものを有るかのように考えなくては、倫理は成り立たな・・・ 森鴎外 「かのように」
東京化学製造所は盛に新聞で攻撃せられながら、兎に角一廉の大工場になった。 攻撃は職工の賃銀問題である。賃銀は上げて遣れば好い。しかしどこまでも上げて遣るというわけには行かない。そんならその度合はどうして極まるか。職工の・・・ 森鴎外 「里芋の芽と不動の目」
・・・ある日化学をしている友人が来たので雑談をしているうちに、私がこう云った。「ギョオテは詩人で同時に自然学者だ。それにファウスト第二部で悪魔が地の下に堕されて、苦しまぎれに上からも下からも臭い瓦斯を出したと云う処に、硫酸を出したと云ってある。硫・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
・・・一つは科学で、一つは文学だ。 もしもコンミニストが、此の文学の、恰も科学の持つがごとき冷然たる素質を排撃するとしたならば、彼らの総帥の曾て活用したる唯物論と雖も、その活用させたる科学的態度を、その活用なし得た科学的部分に於て排撃され・・・ 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」
出典:青空文庫