・・・その際における口のまわりの運動の仕事の大部分が何に使われるかと思ってみると、それは各種の母音に適応するように口腔の形と大きさを変化させるために使われているのである。そしてこういう声を出さずに口だけ動かす読み方では子音を発するに必要な細かい調・・・ 寺田寅彦 「歌の口調」
・・・科学が進歩するにつれてその取り扱う各種の概念はだんだんに吾人の五官と遠ざかって来る。従って普通人間の客観とは次第に縁の遠いものになり、言わば科学者という特殊な人間の主観になって来るような傾向がある。近代理論物理学の傾向がプランクなどの言うご・・・ 寺田寅彦 「科学者と芸術家」
・・・しかもそれらの各種の論文は互いに相鼎立して、どちらも、それ自身としては正当でありうるのである。ただそれらの間の優劣を区別する場合の目標は、著者の主観によって選まれた問題の構成のしかたとその解法の選択いかんによって決定されるのであって、この優・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ 政府の所属で、各種科学の特殊な専門的題目の研究所として看板をかけた処では、比較的にいくらか自由である。しかし、例えば蚯蚓の研究所で鯨の研究をやりたいといったような場合には、ともかくも一応上長官の諒解を得るために、その研究の結果がその研・・・ 寺田寅彦 「学問の自由」
・・・そのほかになかなか美しい人形や小箱なども陳列してあったが、いちばん自分の注意をひいたのは児童教育のために編纂された各種の安直な絵本であった。残念ながらわが国の書店やデパート書籍部に並んでいるあの職人仕立ての児童用絵本などとは到底比較にも何も・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・ これに反してここに紹介した各種の珍奇なレコードは、ともかくもそれぞれ一つの「自由度」に対する数量的レコードへのおぼつかない試みの第一歩として、それぞれに固有ななんらかの文化的な意味をもつものだと思われるのである。 三原山の投身自殺・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・これらのバランシングに関する各種多様の研究は皆三菱研究所で行ったものである。また器械の廻転軸の捻れを直接光学的に読み取るトーションメーターの考案も最も巧妙なものとして帝国学士院から授賞されたものである。また鉄筋コンクリートで船を造る場合に主・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・彼は興味本位の立場から色々な怪奇をも説いてはいるが、腹の中では当時行われていた各種の迷信を笑っていたのではないかと思われる節もところどころに見える。『桜陰比事』で偽山伏を暴露し埋仏詐偽の品玉を明かし、『一代男』中の「命捨ての光物」では火の玉・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・外の各種の舞踊に表われるような動的エネルギーの表出はなくて、すべてが静的な線と形の律動であるように思われた。 二番目の「地久」というのは、やはり四人で舞うのだが、この舞の舞人の着けている仮面の顔がよほど妙なものである。ちょっと恵比寿に似・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・この方の専門的な立場から見れば、地震というものは、地球と称する、弾性体で出来た球の表面に近き一点に、ある簡単な運動が起って、そこから各種の弾性波が伝播する現象に外ならぬのである。そして実際多くの場合に均質な完全弾性体に簡単なる境界条件を与え・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
出典:青空文庫