・・・あり母であることによって、いよいよ勤労生活に安定が保障されているような社会ならば、したがって、太い潮が細々とした流れを吸いあげてしまうような金づまりだの、手にもっている御飯の茶碗をはたき落されるような馘首がおこる原因も減ることは明白である。・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・ 政府によって言明された大量馘首政策が比較的ゆるやかなテンポで行われているのも勤労階級の組織力によっておされているからです。最も退嬰的であると考えられていた教員、全逓・官公庁の職員も婦人をこめて今は前線に進んでいます。農民組合は日本全国・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・つづいて、小林多喜二全集の編輯は、実に周密、良心的に努力されていて、ただうりものとして現在刊行されている各種の全集類とは、まるで趣をことにした実質をもっていることを、当然のことながら新しい意義でそれぞれの心と行動の上にうけとる思いがある。直・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
・・・ 一九四六年以来文化の各方面に各種の委員会がもたれてきた。これらの委員会は民間人によって組織され、日本の過去の反民主的な文化伝統と統制とを打破する目的を与えられていた。現在でも政府の言論官僚統制として批判されている放送事業法案が委員制を・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・米国の箇人的教育は、各種の箇性を重んじながら、其の功利主義の伝統的暗示、或は宣伝に依て、箇人的気質が、公衆の不文律に順応して行ける程度の寛和、或は弛緩を加えて居ります。従って、群集の各人は、箇性の力に明かな局限を認める事に馴れ、其の局限の此・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・めてゆこうと努力している点で注目をひいている『埼玉文学』にしろ、同人たちは、より人間らしい社会生活の確保と、その文学の確立のために尽力してゆくという大きくて永続的な人民的努力のうちに、埼玉在住の人々の各種各様の文学的傾向と素質とをつつんで、・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・一九四六年来の出版・読書関係の各種世論調査や労働組合のサークル調査を見ても、わたしの話や作品は、大衆の民主的・前進的感情の何らかの真実と結ばれている。「播州平野」にみちみちている戦争への抗議は人々の生活の底にうずいていないものだろうか。この・・・ 宮本百合子 「事実にたって」
・・・ いわゆる肉体小説、風俗小説の作者から、共産党員である作家・批評家までを包括して持たれる懇談会は、ただそれらの各種の人たちが、もちこして来ているめいめいの型のままで、一堂によりあつまったというだけでは、烏合であろう。そこから去ってしまえ・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・民族優越主義や『国のあゆみ』、『民主主義』のような歪められたもので或る時期をひきまわされ、やがて、理性が発達すればもう一遍、現実認識の方法を自分でもちなおさねばならないような教育をされるよりも、世界の各種社会について、リアリスティックな知識・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・ 自殺であるにしろ他殺であるにしろ、下山総裁の死は、国鉄の大馘首と直接関係がある。七日の時事その他は、技術畑出身の地味な性格の下山氏が、その性格をかわれて六月に総裁となり、こんどの十六万人の整理問題について、非常に苦慮していた。「切ない・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
出典:青空文庫