・・・というのだろう。食糧事情は、封建の「家」のふところからさえ、急に過剰人口となったそれらの母子を追いはらおうと欲する。こういう実際だのに、政府が「婦人は家庭へかえれ」と馘首の先頭に婦人をおいていることの不条理は、あらゆる人の心魂に徹している。・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・青酸加里を毒物と知っている人民も、政府予算の八五%は働く人民の懐からまき上げるという、間接殺人は頂いて、更に二百万人の馘首をしようとしている保守政府を頂いてもよさそうな輿論を示すものさえある。中毒する大豆粉にも、政府の命令ならば感謝する日本・・・ 宮本百合子 「目をあいて見る」
・・・職業婦人の感情には、集団としてそのしきたりに反撥する感情の潜んでいることは自然であり、男の同僚たちも、男尊の一般的傾向にしばられ女に親切な男として仲間からある笑いをもって見られることを厭う。馘首の心配に到る前に、これらの重複した原因から、男・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫