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・・・ 私共がききかえす間もなく、「一日に大地震があった後に大火災で、全滅だと云うこっちゃが」 彼は、立ったまま、持って来た号外を声高に読み始めた。この時初めて、私共は、前日の地震が東京からの余波であったことを知った。号外によれば、一・・・
宮本百合子
「私の覚え書」
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・・・ 家は五十一のとき隼町に移り、翌年火災に遭って、焼け残りの土蔵や建具を売り払って番町に移り、五十九のとき麹町善国寺谷に移った。辺務を談ぜないということを書いて二階に張り出したのは、番町にいたときである。 お佐代さんは四十五のとき・・・
森鴎外
「安井夫人」