・・・の中に、完全に燈火管制された都会の夜の物凄い気持を、自ら仮死状態に陥った都市の凄さを描いている。レーンの小説「戦争」又はレマルクの「西部戦線異状なし」バルビュスの「砲火」などを読んだ人々は、燈火管制下の夜の凄さというものは、仮死どころか、そ・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・ メーデーに赤い広場の歴史的首切り台に飾られた労働者の大群像は祭の後にモスクワ河の河岸にある「文化と休養の公園」の丘の上へ移された。 河岸には職業組合の設けた水浴場がある。 青葉の下の飛び込み台から身をおどらし、若い女が水へ飛び・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・今思えば、その声も歌詞もキャバレーで唄われたようなものであったろう。更に思えば、当時父の持って来たレコードもどちらかと云えばごく通俗のものであったと考えられる。オペラのものやシムフォニーのまとまったものはなかったように思われる。 程なく・・・ 宮本百合子 「きのうときょう」
・・・健坊[自注8]のところで珍しく夕飯をたべ、九時半頃になってそこらへ涼みに出ようと、これも栄さんを加え四人でぶらりと出たらどうも水の流れるのを見たくてたまらず、どっかへ行ってみようと私が云い出し、両国の河岸までのしてしまいました。何年ぶりかで・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・四十六度は華氏で摂氏だと八度です。五十五度が十度よ。 十三日の誕生日にはスエ子からインクスタンドと父から柱時計を貰いました。インクスタンドは黒い円い台の上にガラスの六角のがのっていて、黒いフタのついたもので、しっかりとした感じです。柱時・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ きらきら瓦斯燈の煌く下に 小さい娘が 哀れな声で 私の奇麗な花を買って頂戴な と 呼びながら立っている。 歌詞の細かなところは忘れた。けれども、絶間ない通交人は、誰一人この小さい花売娘に見向きもしないで通りすぎ・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・の歌が素朴な明るいメロディーをもって、人に知られない着実な生活をいとなんでいる主婦の一人である坂井照子さんによって作曲されたことも忘れられません。あの「町から村から工場から」の歌詞は国鉄詩人の作品です。 新日本文学に属する民主的立場の作・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・清潔な社会主義社会にとって有毒な官僚主義、俗人趣味のバチルスとしてのプリスィプキンは仮死状態で発見されたがそれをどう処理するか。やっぱり全СССРのラジオの決議で活きかえらすことになり、珍動物として厳重な檻の中で試育され、マスクをかけた一九・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ かつて『女人芸術』が、全女性行進曲というものの歌詞を募集したとき、伊豆の大島の小学校の教師をしていた一人の若い女性が、当選した。それが松田解子であった。秋田の鉱山に生い立った彼女は、プロレタリア文学運動の時代、婦人作家として一定の成長・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・一九一四―一九一九年大戦に於て彼らの皇帝並帝国に奉仕せる将校、下士およびロンドン市民の不朽なる名誉の為に、記念碑が立てられている。今日は休戦記念日じゃない。事務的なロンドン人は邪魔っけそうにその銀行前に突立つ記念碑をよけて急ぎ歩いた。枯れた・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫