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・・・そこを坂下からこちらへ十人ばかりの陸軍の兵隊が、重い鉄材を積んだ車を曳いて登って来ると、栖方の大尉の襟章を見て、隊長の下士が敬礼ッと号令した。ぴたッと停った一隊に答礼する栖方の挙手は、隙なくしっかり板についたものだった。軍隊内の栖方の姿を梶・・・
横光利一
「微笑」
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・・・それは当人の罪であるばかりでなく、また傍にいて救いの手を貸してやらない者も、責めを負わねばなりません。 ここに私は困難な、そうして興味ある問題を見いだします。なぜなら、青春期に我々の内に萌えいでた芽は、その滋養を要する点で一々異なってい・・・
和辻哲郎
「すべての芽を培え」