・・・その中心的な箇条の一つは、知識人の社会的評価に関するもので、従来社会的にも文学的にも知識人一般というものが抽象的にこの世の中に在るのではなくて、歴史と社会の層に属して現実を生きつつあるものだと云われ、従って歴史に対する知識人の進歩的な態度、・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ところがこの度の生活探求に於ては、よかれあしかれ知識階級の一特質をなす知性の世界を観念過剰の故に否定して、単純な勤労の行動により人間としての美と価値とを見出そうとしていることは、一方の極に生産文学を持った当時の人間生活精神の単純化への方向と・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・夜のお化粧とか朝のお化粧とかそう云う化粧読本の箇条としての一般論みたいなものは行き渡っているようだけれども、もっと自分に即して、自分の気持をとらえているという風のおしゃれは、まれに思えます、それは一応通ななり、凝ったなり、或はシークななりと・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・空しき過剰という心持がしなくもなく、さしずめ悩ましき春らしい一つの眺めとも云うべきか、今頃から桜が散るまで私は毎年余り愉快に暮すことが出来ない。 春の東京を一帯に曇らす砂塵が堪らないのが第一の原因だ。花曇りなどと云う美的感情に発足したあ・・・ 宮本百合子 「塵埃、空、花」
・・・熱心に知っているかぎり説明した。箇条を見てわかるように、彼女たちは、農村ソヴェトのために活動する者としてのはっきりした立場から問いを出している。 相当しゃべって、ひとりでにみんなが黙った。突然、 ――日本にも、女房をなぐる亭主が沢山・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・のふところからさえ、急に過剰人口となったそれらの母子を追いはらおうと欲する。こういう実際だのに、政府が「婦人は家庭へかえれ」と馘首の先頭に婦人をおいていることの不条理は、あらゆる人の心魂に徹している。道徳的頽廃の根源も、生活不安定にある。・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・ 雁金という人物は、非行動的で、自意識の過剰になやむインテリゲンチア山下久内に対照するものとして、単純な、変りものの発明狂、行動者として扱われているばかりでなく、作者は、はじめから、久内が「同情し得る」程度の条件しか持たぬ人物としてこし・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・たった三箇条。 講釈師大谷内越山の訛 金色夜叉「昔の間貫一は死ですもうとる」 小酒井博士 ひどい肺病 妻君 かげで女中をしかりつけ、夫のところへ来ると、まるでわざとらしい微笑をはなさず・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・には、まだまだどっさりの過剰物がついています。文章の肌もねっとりとして、寝汗のようで、心持よくありません。しかし、作者は、どうもそれを知っているらしいんです。その気味わるいような、ブリューゲルふうの筆致が、作品の世界の、いまだ解決されない憂・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・その勤労して生きる人民の人口比率を見れば三百万人の女子人口が過剰している。今更繰返す必要の無い性生活全面の困難は大きい。人間らしくまともに生きようとする私たちの足もとには、何とひどい凸凹があるだろう。たまに美しい空の色をうつしている場所があ・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
出典:青空文庫