・・・「歌声よ、おこれ」以下、この本の前半にあつめられた評論は、それぞれの角度から、日本のすべての人がおかれた非人間的なきのうをかえりみ、きょうを眺め、明日の可能を歴史の現実のうちに発見しようとしたものである。文学を中心として語られているけれ・・・ 宮本百合子 「序(『歌声よ、おこれ』)」
・・・ 僅かながら年々絶えず出版されていたのは家事・家政・料理・育児・裁縫・手芸などの本で、それにしろ程度から云うと大体は補習書めいたものが多い。 これらの状態を、ひとめでわかる統計図にして、今日の日本の若い女性たちが眺めたら、彼女たちは・・・ 宮本百合子 「女性の書く本」
・・・あれを見ると、例えば、家政婦に住み込みたいとか、家政婦を求めるとか、というようなことが、何か知ら曖昧な、いろいろの世相が、これにも感じられ味わわれるような気がして、わたくしには面白い。広告欄はたいして注意しませんが、でもブック・レビューなど・・・ 宮本百合子 「身辺打明けの記」
・・・それから、メーデーに勤労者は自分たちの意志と希望とを表現するものであるということを、その歌声の響のなかにもはっきり示した去年のメーデーの雰囲気。今年五月一日に、私たちみんなはどんなこころで、町から村から工場から、と歌うのだろう。 真面目・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・が、一つの瞬間、そういう言葉の差別は急に溶けて一かたまりの焔のような歌声に盛りあがった。それは、これらの人々が、――インターナショナルとともに!と歌ったときだった。 ハリコフに於けるこの国際革命作家大会には、松山という日本からの・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・若々しく楽しい歌声はドアをしめても廊下へあふれてきこえる。その歌声をききながら、向い合いの室では「新聞」編輯だ。一人がルバーシカの襟をひらいて一生懸命モスクワ発行の『プラウダ』から何か論説をやさしく大衆向きに書き直している。鋏で切抜きをやっ・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・そして几帳のかげの光君に時々声をかけては、「いらしって御加勢なすって下さいナ、何だか雲行があやしくなってしまいましたもの」なんかと久しい、なれたつき合いのようにたまに口を交したことほかない光君にしゃべりかける。わきに居る母君等はもう・・・ 宮本百合子 「錦木」
・・・十二月に新しい日本の民主的文学へのよびかけとして「歌声よおこれ」を新日本文学創刊号のために書いた。近代文学のために「よもの眺め」を書いた。主としてジュール・ロマンの「ヨーロッパの七つの謎」の書評であり、資本主義国家が第一次大戦後欧州の社・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・限りまでなされて文を送った婦人の門にパンのかけらをほおばりなされたり、歌う声をよくしようとて滝壺に座って歌ってござるうちに目がまわってそのままどこに行かれたか先のわからぬ様になられたも、フトもれきいた歌声とチラとかい間見た後姿に命がけでしの・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・「歌声よ おこれ」から「一九四六年の文壇」「政治と作家の現実」「バルザックに対する評価」「バルザックについてのノート」などは一九四七年八月に出版された文学評論集『歌声よ おこれ』にあつめられていたものである。「一九四七年の文壇」「両輪」「世・・・ 宮本百合子 「はしがき(『文芸評論集』)」
出典:青空文庫