・・・で母を書いている書きぶりは、五つで、もうあんまり母にかまわれなくなっている子供が、その母としてもその子としても避け難い力で、騒がしい無知な下層民の群の中に押しやられている姿として描いている。長い「家庭生活、家庭教育」で囲われたことのない、歩・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・ マクシム・ゴーリキイの生涯は、人類の歴史が今日の段階に於て輝やかしき実を結ばせた文学的大才能の一典型として、過去の世界文学史に現れたいかなる天才者に比べても、本質的に全く新しい意義をもっている。下層階級出身のゴーリキイが波瀾多いジクザ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ゲーテを従来の理解に従って天才者の一典型と見るそれとは本質的に異った意味で、人類の歴史が現段階に於て出現させた大才能の社会的完成の注目すべき一典型なのである。下層階級出身のゴーリキイが、そこに到るまでの道ゆきに於て、顕著な特色の一つが、今私・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ 今日では、個人を超脱した何かより高いもののように仮装されがちな皮相なものわかりのよさが、女の実質をたかめるものでないことを理解するところまで、ものわかりよくならねばなるまい。外からこうしろといわれ、そうしていれば無事だからというものわ・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・縁談の場合、男だけが虫のよい註文をつける腹立ち、仮装とトリックとで娘さんに対する仲人というものへの侮蔑の感情、それらはみな若い美しい潔癖であり、つよく娘さんの側から社会的な態度として主張されてゆかなければならない点であると思う。けれども、「・・・ 宮本百合子 「若い婦人の著書二つ」
・・・十九世紀の近代社会の勃興期におけるロマンティシズムのような、現実へ働きかける情熱としてではなく、今日の分裂的な恋愛、とくに日本においては、逞しい生活意欲という仮装面の下に、危うく過去のあり来りの男の凡俗な漁色の姿をおおいかくしている結果にな・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫