・・・ 社会の内部の複雑な機構に織り込まれて、労働においても、家庭生活においても、その最も複雑な部面におかれている婦人の諸問題を、それだけきりはなして解決しようとしても、それは絶対に不可能であった。世界を見わたせば、一つの国が、封建的な性質か・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・ 人間の棲む到る処に恋愛の事件があり、個人の伝記には必ずその人の恋愛問題が含まれてはいますが、人類全般、個人の全生活を通観すると、それらは、強いが烈しいが、過程的な一つの現象と思われます。 恋愛経験の最中にある時、或は何かの理由で恋・・・ 宮本百合子 「愛は神秘な修道場」
・・・を実例として、ルポルタージュと記録小説との、芸術化の時間的過程の相異を明らかにしようとしていることは分る。が、芸術化の過程が一条件としてもっている諸現象の評価、そのより特徴的な方向の取捨選択の必要を、「現実を歪曲する」権利という表現で強調し・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・けれども、実際にあたると、文化は複雑な有機体であって、建設的である過程も甚だいりくんでいる。 この間こんな話をきいた。明日の日本の文化と精神の建設について研究してそのための役についている人から、日本人にはもっとシェークスピアを理解させな・・・ 宮本百合子 「明日の実力の為に」
・・・ 今日、こういう過程を経た新聞人の進歩的な要素が、わたしたち人民の、ひろく強く生き進もうとする熱意と本当に自然な一致をもって結び合わされつつあるのは、実に意義深いことだと思う。言論が客観的な真理に立つ可能とその必然をますと共に、人民の生・・・ 宮本百合子 「明日への新聞」
・・・ちょうど人間が胎児であったとき、その成長の過程で、ごく初期の胎生細胞はだんだん消滅して、すべて新しい細胞となって健康な赤ん坊として生れてくる。けれどももし何かの自然の間違いで、胎生細胞がいくつか新しくなりきらないで、人間のからだの中にのこっ・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・けれども、歴史がそこまで進む過程は実に単純でなく、容易でなく、多くの堅忍が要求される。今のように表面的にはそういう新たな歴史の建設的推進力が見にくくされているような時期には、窮乏化する小市民インテリゲンツィアが、確信をもって新たな次代の階級・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・その過程で非常に注目すべきことがあった。エログロ出版物を駆逐するために、警察力を使えということ、新しい取締法律をつくれという意見が伝えられました。しかし、猥褻罪を取締るためには、そのための法律がある。どうせ悪質な出版をする者はその時々の情勢・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 女らしさ、という表現が女の生活の規準とされるようにまでなって来た社会の歴史の過程で、女がどういう役割を得てきているかといえば、女らしさという観念を女に向ってつくったのは決して女ではなかった。社会の形成の変遷につれ次第に財産とともにそれ・・・ 宮本百合子 「新しい船出」
・・・こういう過程は、私たちのすべてが経験していることではないだろうか。 文学の発端とでもいうような、こういういきさつを、思いかえしてみると、わたしの少女時代の遠い記憶のなかには、一つの棚があって、そこにゴタゴタにつみこまれていた無数の雑誌や・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
出典:青空文庫