・・・しかも一層華美な、或いは知的めいた擬態をもって、権力と金力とはそれらの人々を通じて、威力をふるいつつある、という正常でない客観的事情についての、正直な認識である。その現実の認識に向って青春のヒューマニティーが対決させられるとき、そこに湧く思・・・ 宮本百合子 「日本の青春」
・・・或る読売雑誌には、かっちゃんと呼んで断髪兵児帯姿の良子嬢をはったあんちゃんの一人が、いかにも町の若者らしい情感をもってかっちゃんがそこいらの女給などは夢にも知らぬカメラの話、ヨットの話、華美な夏の鎌倉の遊楽生活を話したりするをきいて、映画的・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・ゴオチェは華美なアントニーとクレオパトラのロマンスの描写において。デュマはその歴史小説において。 金くさい卑俗な利害のために日夜鎬を削るブルジョア共の社会生活に反抗するこれらのロマンチスト作家たちが互に「焔の如く燃ゆる人々」として結合し・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ 世間では親も娘もそれを唯一の目的として心を砕いている婿選びに興味をもつ素振りもないし、社交界に出たばかりの娘たちを有頂天にさせる華美な遊楽や交際も、フロレンスはただ生れ合わせた境遇の義務の一つとして、それに従っているというだけのように・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・だが、近松の浄瑠璃にうたわれる女主人公たちの悲しい運命に涙をおとして当時の女がききほれたのは、ただ当時が華美で音曲一般が流行したからばかりではなかったろう。やはり、「女大学」が天下の至言として流布された、そのような社会のとざしのなかに生きな・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・そうして見れば、当時最も華美とされた城の中でさえも、女主人公と使われる女達との間には、着るものから食べるもの、あらゆることに恐ろしい懸隔があったことが分る。 徳川時代に入って封建制は確められ、士農工商の身分的区別も確立した。徳川氏の権力・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫