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・・・ 午後、机の上の、さむさでいじけ、咲かないまま涸れた薔薇をぼんやり見ていると、玄関で誰か「今日は」と呼ぶ声がした。丁度使に出ていたので、立ちかけたが、どうも声が変な調子で、物乞いらしく感じられる。立ったまま躊躇していると、エーが、彼の部・・・
宮本百合子
「静かな日曜」
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・・・否応なく読ませられることから胸のわるくなるような思いのするその本を眺めまわしていると、スムールイは、嗄れ声で皿洗い小僧に催促した。「お――、読みな」 スムールイの黒トランクの中には『ホーマー教訓集』『砲兵雑記』『セデンガリ卿の書翰集・・・
宮本百合子
「マクシム・ゴーリキイの伝記」