・・・そういう経験からも私はこの条に注意を喚起されて読んだのであるが、荒木巍氏の「新しき塩」の中でも、違った形と作者のテムペラメントにおいてではあるが、やはり「流行的な参加の仕方に反撥を持ったによる」と云うことが自信をもって云われている。今日、文・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・黒と白だけで全部を表現する版画家の人生に対する感情にさまざまな点から新しい興味を喚起されたし、文化の程度の低い民族あるいは社会層の者ほど原色配合を好み、高級となり洗練された人間ほど微妙な間色の配合、陰翳を味わう能力を増すといわれているありき・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・ 更にラップは、文学の組織的生産の問題に向ってみんなの注意を喚起した。ソヴェトの全生産は、映画・出版のような文化生産をこめて生産経済計画によってされている。今日のあらゆる社会生活が文化的活動をこめて、この生産経済計画に支配されていること・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・地下鉄ではついこの三月二十日から三日間従業員約百名内出札の婦人四〇名が参加して地下の引込線を利用して車輌四台を占領し、全国的注意を喚起したストライキをやった。原因は出征従業員を会社側で欠勤扱いにしたことであった。「触ルト死ぬゾ」と大書した紙・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ここまで、日本の労働運動の実状について極東委員会の注意を喚起し、基本的人権を現実のものとするようにと日本的限界を拡げていったのは、どういう日本の官僚たちの仕事だったろう。これこそまったく、勤労大衆の実行力と組合の献身とその前衛である党とが、・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・彼は連続的に発表された諸論策において、日和見主義の社会的階級的根源をあばき、作品について具体的に指摘し、日和見主義との闘争がいかに政治的重要性をもつものであるかということについて、鋭く大衆の注意を喚起した。同志小林が卓抜なボルシェヴィク作家・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・坑内の換気のため、エレベーターやトロを動すために、動力室では五人の熟練工が絶えず働いているが、感服したのはその安全装置である。唸って震えている、巨大なモーターの周囲は油さしやその他にごく必要な部分だけを露出して強い金網で覆ってある。調帯も、・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・は、内容に、種々な価値の問題、教育、宗教に対する考察、或は子供と大人の世界の差異に対する精密な観察等が含まれているにも拘らず、芸術品として、読者の心に喚起した創造的な共鳴は、矢張り、貴女の御作に接せずには得られない、一種の人格的精神感銘であ・・・ 宮本百合子 「野上彌生子様へ」
・・・が上方で華やかな世評を喚起したのもこの前後であった。京都生れの武士であった近松は、当時崩れゆく武家の経済事情に押し流されて、いくつかの主家を転々した末は浪人して、歌舞伎の大成期であったその時代から辛苦の多い劇作家の生活に入った。芭蕉よりは十・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・労働者のクラブには衛生陳列室があって、性病とその遺伝の害悪を模型や図解で示し、肺病、癲癇、アルコール中毒等についても若者たちの具体的、日常的要心を喚起している。 竹内茂代女史は、日本女子の体格分類統計をもって医学博士になられた。彼女の博・・・ 宮本百合子 「花のたより」
出典:青空文庫