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・・・それは心持よいが、タクシーもなく、激しい速力で昨夜から、長崎へ、長崎へと、駛りつづけて来、緊張した神経が突然無風帯に落ちこんだような緩慢さを感じた。ゆっくり問答した結果、私共は二台の俥に乗った。長崎唯一のホテルであるジャパン・ホテルに先ず行・・・
宮本百合子
「長崎の印象」
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・・・尨大なダブル・ベッドは、緩慢にカラを閉じてすべすべした鏡板に戻ってしまいました。「何て、簡単なんでしょう!」 子供らしい私の感嘆は、夫婦を非常に満足させたようです。「全く簡単ですよ。家庭の妻の負担は、本当にへります。御存知でしょ・・・
宮本百合子
「よろこびの挨拶」