・・・ 神将 我々は天が下の陰陽師、安倍の晴明の加持により、小町を守護する三十番神じゃ。 使 三十番神! あなたがたはあの嘘つきを、――あの男たらしを守護するのですか? 神将 黙れ! か弱い女をいじめるばかりか、悪名を着せるとは怪しからぬ・・・ 芥川竜之介 「二人小町」
・・・ なるほどそうであったか、姉は勿論母までがそういう心になったでは、か弱い望も絶えたも同様。心細さの遣瀬がなく、泣くより外に詮がなかったのだろう。そんなに母に叱られたか……一晩中泣きとおした……なるほどなどと思うと、再び熱い涙が漲り出して・・・ 伊藤左千夫 「野菊の墓」
・・・フランス バルザックとフランス小説の全主人公は、社会の抵抗より強いか弱いかであり、彼等は生活を克服するか、或はその車輪の下じきとなるかである。p.174ドイツ 小説の主人公はマイスターを典型として統一の方向をとり、力は集合され・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
出典:青空文庫