・・・ ロシヤの医科大学の女学生が、或晩の事、何の学科やらの、高尚な講義を聞いて、下宿へ帰って見ると、卓の上にこんな手紙があった。宛名も何も書いて無い。「あなたの御関係なすってお出でになる男の事を、或る偶然の機会で承知しました。その手続はどう・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・私は、中学時代から地理の学科を好まなかったのだ。私は、何も知らない。したたかに自信を失い、観察を中止して船室に引き上げた。あの雲煙模糊の大陸が佐渡だとすると、到着までには、まだ相当の間がある。早くから騒ぎまわって損をした。私は、再びうんざり・・・ 太宰治 「佐渡」
・・・私は、綴方の事は、きれいに忘れて、学校から帰ると、花壇の手入れ、お使い、台所のお手伝い、弟の家庭教師、お針、学課の勉強、お母さんに按摩をしてあげたり、なかなかいそがしく、みんなの役にたって、張り合いのある日々を送りました。 あらしが、や・・・ 太宰治 「千代女」
・・・ポルジイは独り残って、二つの学科を修行した。溜息の音楽を奏して、日を数える算術をしたのである。 こう云うわけで、二つの出来事が落ち合った。小さい銀行員が漫遊から帰って来て珍らしがられると云うことが一つ、ポルジイ中尉が再びウィインの交際社・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・それでもし生徒が文学的の傾向があるなら、それにはラテン、グリーキも十分にやらせて、その代り性に合わない学科でいじめるのは止した方がいい……」 これは明らかに数学などを指したものである。数学嫌いの生徒は日本に限らないと見えて、モスコフスキ・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・ 自分の知っているだけの文献を数えてみても、これだけあるのだから、私などの知らない他の方面の学科に関するものをあげたら、ずいぶんな分量になるかもしれない。これから後にもまだどれだけの可能性があるかわからない。 こんな事を考えてみると・・・ 寺田寅彦 「池」
・・・ 科学者の中にはその専修学科の発達の歴史に特別の興味を有っている人が多数にある。これが一歩進むとその歴史に関したあらゆる記録、古文書、古器物に対して丁度骨董家が有つような愛好の念をもってこれを蒐集する人もある。これは先ず純粋な骨董趣味と・・・ 寺田寅彦 「科学上の骨董趣味と温故知新」
・・・ 学位というものは決してやり惜しみをするような勿体ないものでも何んでもないのであってただ関係学科に多少でも貢献するような仕事をなにか一つだけはした人間だという証明書をやるだけのことであって、その人がえらい学者であり何んでも知っているとい・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・第一高等学校を経て東京帝国工科大学造船学科へ入学し、明治三十三年卒業した。高等学校時代厳父の死に会い、当時家計豊かでなかったため亡父の故旧の配慮によって岩崎男爵家の私塾に寄食し、大学卒業当時まで引きつづき同家子弟の研学の相手をした。卒業後長・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
ある入学試験の成績表について数学の点数と語学の点数の相関を調べてみたことがあった。各受験者のこの二学科の点数をXYとして図面にプロットしてみると、もちろん、点はかなり不規則に散布する。しかしだいたいからいえば、やはり X ・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
出典:青空文庫