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・・・花房の父があの家をがらくたと一しょに買い取った時、天井裏から長さ三尺ばかりの細長い箱が出た。蓋に御鋪物と書いてある。御鋪物とは将軍の鋪物である。今は花房の家で、その箱に掛物が入れてある。 火事にも逢わずに、だいぶ久しく立っている家と見え・・・
森鴎外
「カズイスチカ」
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・・・古くなったがらくたを取り片附けなけりゃあならない時代には、あんな焼けな人間も道具かも知れない。兄きなんぞも、廻り合せでは大きい為事をしたのかも知れねえんだよ。」「己なんぞも西洋の学問をした。でも己は不動の目玉は焼かねえ。ぽつぽつ遣って行・・・
森鴎外
「里芋の芽と不動の目」