・・・英のシエクスピールやミルトンや仏のパスカルやコルネイユや皆別に機軸を出さざる莫し。然らずんば何の尊ぶ可きことか之れ有らん。 記してあるのみならず、平生予に向っても昔し蘇東坡は極力孟子の文を学び、竟に孟子以外に一家を成すに至った。若し・・・ 幸徳秋水 「文士としての兆民先生」
・・・ 古来邦画家は先人の画風を追従するにとどまって新機軸を出す人は誠に寥々たる晨星のごときものがあった。これらは皆知って疑わぬ人であったとも言われよう。疑って考えかつ自然について直接の師を求めた者にいたって始めて一新天地を開拓しているの観が・・・ 寺田寅彦 「知と疑い」
・・・従ってこれが勉強法と言っても、別になんの新機軸もなく、そうたいして骨折って勉強したこともない。否、かえって自分の学生時代を回顧すると、苦学というよりむしろ楽学とでも言うほうかもしれぬ。こういう物をほしい、ああいう書物が買いたいと言えば、親は・・・ 寺田寅彦 「わが中学時代の勉強法」
・・・漢詩和歌の擬古の裡に新機軸を出したものは姑く言わぬ。凡そ此等の人々は、皆多少今の文壇の創建に先だって、生埋の運命に迫られたものだ。それは丁度雑りものの賤金属たる鴎外が鋳潰されたと同じ時であった。さて今の文壇になってからは、宙外の如き抱月の如・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
出典:青空文庫