・・・それほど、前から、たとえ主観的なものであるにもしろ政治家としてのトルーマンの確信がはっきりわかっていたのなら、日本の公器であるはずの日本の新聞が、どうして公平に記事を選ばず、デューイ当選を、まるで既定の至上事実のようにわたしたちに宣伝しなけ・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・日本の民法が、法律上における婦人の無能力を規定している範囲は、何とひろいことだろう。女子は成年に達して、やっと法律上の人格をもつや否や、結婚によって「妻の無能力」に陥ってしまう。婦人が人間として能力者である時間は、特別な結婚難の時代のほかは・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・部落は自作農ばかりだから、闘争組織は農民委員会であると規定し、「僕はいよいよ実行運動に入ろう」「時はあたかもウンカ問題で村会とこじれている」「やさしくなくとも僕はやる。我々の故郷に革命の詩をもたらすための開墾を」と、プロレタリア作家の農村に・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・「作家の表現しようと考える対象の性質から規定されて来る。」ところで、この著者の理解によると現代の作家は「社会の人々が普通にはもっていないような感情、又は持っていても表現して見せる必要のないような感情については、なんらの表現法がなく、作家がこ・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・ 民主的な社会生活の根本には、人権の尊重という基底が横わっている。人権尊重ということは、正当な思想を抑圧して小林多喜二のような卓抜な一個の社会人・作家を撲殺するようなことが決して在ってはならないという通念を意味する。同時に、それを主体的・・・ 宮本百合子 「今日の生命」
・・・これら二様の態度は、教養に対しては二つの端に立ちつつも、世俗的な常識に対して戦う態度は相通じたものをもっており、同時に、反撥し或は評価する自身の態度とともに、対象となる既定の文化・文学的教養そのものの歴史的な本質については深い省察を加えない・・・ 宮本百合子 「作家と教養の諸相」
・・・ このあいだ政府はインフレの物価騰貴につれて最低賃銀の基底を公表した。若い人々はあれをみて何を感じたであろうか。男子三十歳から五十歳が最低四百五十円といわれている。では二十八歳の青年、二十五歳の者、二十二歳の者、その人々の労働の報酬はど・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・ 作家同盟の成員が種々の層からなりたっているということは、作家同盟という一組織の内部でそれら様々の段階の作家たちが次第にプロレタリア作家として自分たちを強力に鍛え純化してゆくことを、既定の条件としているわけである。作家同盟のなかに、同伴・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・対等につき合うことは既定の事実で、それからさき、どうつき合うかが問題であるヨーロッパの国際性とはちがった気分が流れている。これを逆にして、アジアに向うと明治以来の日本は、女性さえも中国・朝鮮に対して侵略以外に知っていない。日本の婦人作家の書・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・現金八〇〇円といっている人々が五〇〇円になっては困ると思うよりも、三五〇円しか現在貰っていない人が最高五〇〇円をもう既定の標準のようにして式が立てられているのを見たとき、どんな気持がしたでしょう。 払出額、世帯主月三百円、一人ます毎に一・・・ 宮本百合子 「モラトリアム質疑」
出典:青空文庫