・・・簡素であるということは単純でもあり淡白でもあるということになるだろうが岡崎義恵氏の日本文学研究の中には、淡泊であることが「生命力の稀薄のあらわれ」と見られてもいる。単純なものが俄に複雑な事象に面してどのような混乱に陥り、性急に陥るか。性格は・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・ないことについて苦悩しなければならないかという、その制約の根源をあばく気魄がないのであろうか。酵母についての科学的知識を示すならば、どうして、インテリゲンチアの生活解剖に、社会科学を活動せしめるに堪えなかったのであろうか。 久内が、父の・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・富美子の生麦弁を「言葉の気魄」とかいたりすることへの皮肉な気分も書かれていて、それ等の反撥はいずれも同感をもって思いやられた。野生な自然な反撥があるのだが、同時に野沢富美子が、その反撥をバカな流行唄をジャンジャン歌うというような形でしか表現・・・ 宮本百合子 「『長女』について」
・・・は、その親しみぶかい沈潜した文章をとおして、ボルシェヴィキーの気魄を犇々と読者に感銘せしめる小説である。「オルグ」を書いた時代、前衛を描きながらも同志小林自身の実感はその境地に至らず、描かれた人物だけがどこやら公式的に凄み、肩をいからしてい・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・ 嘉村礒多氏は、近頃文章だけについて云ってさえ粗末極まるものが多い稀薄なブルジョア作品の中にあって一種独特なねつさ、粘着力を示して「父の家」を書いている。没落する地方の中地主の家庭内のいきさつを「衆苦充満」とこまかく跡づけ描きつつ、・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・これらの作品は凜々とした気魄をたたんでいる点において 私の好むものである。p.13 「が私は「奉教人の死」の情熱を愛する」p.23 こういうことばの中に筆者は自分というものの責任を明かにしている――意識してかしないでか。芥川の作・・・ 宮本百合子 「「敗北の文学」について」
・・・米価はひどい騰貴で商人は肥え、庶人は困窮し、しかも日光の陽明門が気魄の欠けた巧緻さで建造され、絵画でも探幽、山楽、光悦、宗達等の色彩絢爛なものがよろこばれている。よるべない下級武士の二六時にのしかかって来る生活のそういう矛盾が、宗房のような・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・それらの変更は、どれも母がやっていたよりは合理的な生活の方法への動きであり、新しい条件にふさわしい生活をつくり出して行こうとする父の気魄がこもっている仕事なのである。けれども、日が経つにつれ、私はこのごろ二階の床の間に飾ってある母の写真を平・・・ 宮本百合子 「母」
・・・家はそれを煩悶するとしても、然し積極的にそう云う不健全な社会を改革しようなどと云う熱情は、その階級性によって多く持っていないから、いたずらに感傷主義に浸るだけで、彼女等には正しい生活を建設しようとする気魄に欠けています。芸術作品は単に作品だ・・・ 宮本百合子 「婦人作家の「不振」とその社会的原因」
・・・一冊の本の内へはいっていって、その世界と自分の生活とを密接にからみ合わせてみるという気魄のある読みかたが失われているように思える。 現代は一方に一種の精神主義がひろがっていて声高くものをいっているのであるが、その片面にこういう精神活動の・・・ 宮本百合子 「婦人の読書」
出典:青空文庫