・・・ところでかくてこそ人類の正しく幸福な愛は成就される、かくてこそ真の結婚として祝されるべきものだという規範、理想が、まるで彼等の自ら持つ事実とは正反対の形態、内容をとって続々と現れて来る。 時代によらず、周囲によらず、彼等の愛によって結合・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・鹿地氏の文章で、何故今日まで中国文学が特にその理論的な面、批評の面で全く薄弱であるかという理由を学ぶすべての読者は、社会生活の複雑な旧い羈絆が文学を害することの夥しいことに驚かざるを得ないだろうと思う。中国の作家が封建的な重荷とたたかい時を・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・困難は、それらが今も尚われらに芸術的享楽を与え、且つ或る点では規範として又及び難い模範として通るのを何と解するかにある」だけについて見ても、ここで新しき文化の開花のための最も重要な鍵は、最後の一行、「及び難い模範として通るのを何と解する・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・等の内面的旋律までを考えて日本古来の詩形を不朽な規範と考える態度に対して筆者の行っている理論的究明も、今日の現実の錯綜の中にあっては、結局萩原氏の詩論の心的・社会的因子にまでふれないと、読者にはぴったりと来ない。「新日本文化の会」のメムバー・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
・・・それにもかかわらず、結婚生活というものはその形式の本質の中に、アンネットの要求を必然ならしめるような社会的羈絆を女の肉体と精神との上になげかけることに於ては今日もまだ変っていない。その苦痛と抗議とには、言葉と身ぶりが違っていてもやはり日本の・・・ 宮本百合子 「未開の花」
・・・ 現在、私共の生活を支配して居る数多の形式、形式の生む種々の迷信と、羈絆とは、如何な力で解かれなければならないのか。 私共には、その力が無い。その純粋さから湧く、太陽のような力が無い。其の力が無い許りに、私共は恐ろしい紛糾と悔恨の苦・・・ 宮本百合子 「無題」
・・・性関係における自主的選択が女に許されていなかった過去の羈絆は、そういう相互のいきさつの間に形を変えて生きのこり、現れたのであった。 大衆の組織が、短時間の活動経験を持ったばかりで、私たちの日常の耳目の表面から退潮を余儀なくされて後、その・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫