・・・まかり間違うと、鼻持ちならぬキザな虚栄の詠歎に似るおそれもあり、または、呆れるばかりに図々しい面の皮千枚張りの詭弁、または、淫祠邪教のお筆先、または、ほら吹き山師の救国政治談にさえ堕する危険無しとしない。 それらの不潔な虱と、私の胸の奥・・・ 太宰治 「父」
・・・ その心持を誠意のこもった現実の力として表現しようとするとき私たちは、一つの救国運動として故国に対する人民の愛と必要に立つ統一的動きを肯定する以外に、どんな道を見出せるだろうか。雄々しいフランスの婦人たちは、フランスが歴史の波瀾を凌いで・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・中国では、日本の侵略に抵抗して、「抗戦救国」というスローガンがあらゆるへんぴな村々の壁にはられました。そして村人たちはゲリラを闘い日本軍の惨虐に耐えました。字のよめなかったこれらの中国の人民が、第一に知った字が「抗戦救国」であり、改革された・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ロシア、中国、朝鮮の人民が文盲撲滅の第一頁においてソヴェト権力、抗戦救国、民族独立の文字を知らされてゆくのとはひじょうにちがいます。イデオロギーのたたかいは、日本においてますます複雑な課題となりつつあります。すべての専門家は、単に、大衆の文・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・ 日本の真の民主化のために、保守反動の旧勢力を代表する婦人代議士までをこめた一握りの婦人を鼓舞するために、三十もの労働組合の婦人部を動員するなどという方法は、日本の民主化の歴史の逆転である。救国民主連盟の提案は、大衆運動部の組織によって・・・ 宮本百合子 「三つの民主主義」
一 今日の日本において民主戦線統一は、単なる政治上のやりかたという以上に意味をもつと思います。一つの救国運動と思えます。二 戦争犯罪人を包括する政党に、人民の幸福を売ることを絶対にしたくないと思います。三 人民の生活・・・ 宮本百合子 「民主戦線と文学者」
・・・ 今日、民主日本の甦りのために、あらゆる人々が、民主戦線に結集して、封建性と反動性とを排除するために闘うということは、真心からなる一個の救国運動である。一党派の問題でもなければ、ましてや、時節柄という形容詞をつけられるような種類のことで・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・中国の知識人をふくむ全住民は、日本軍の侵略に抵抗して各地ではげしくたたかっていて、その「抗日救国」のビラやスローガンを通じて、中国のおびただしい文盲者さえ文字を知りはじめつつあった。 このごろ、わたしはまたしばしば、かつて心に刻まれ・・・ 宮本百合子 「私の信条」
出典:青空文庫