・・・神々の饗宴と云う奴には、ほとほと参るぞ。ミーダ 全くだ。困るのは君ばかりじゃあない。見てくれ、折角荒々しいような執念いような、気味悪い俺の相好も、半時彼方で香の煙をかいで来ると、すっかりふやけて間のびがして仕舞った。どうだ、少しは俺らし・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・けれども、互にその家庭に招き合ったり、一緒に一団となって饗宴に出たり郊外に遊んだりするようなのは決して誰とでも、と云うことではなく、異性の交際が自由であり普通である丈、相互に強い好き嫌い、選択が行われる訳なのです。 その選択は、これなら・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・木曜日の晩には、そこへ行きさえすれば、楽しい知的饗宴にあずかることができたのである。が、そこにはなおサロン以上のものがあったかもしれない。人々は漱石に対する敬愛によって集まっているのではあるが、しかしこの敬愛の共同はやがて友愛的な結合を媒介・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫