・・・ 工場で男と比べれば三分の一ばかりの殺人的賃銀、十三時間にも亙る労働強化と最悪の条件で男よりひどく搾られるばかりではない。窮迫した農村や失業者の家庭の中で、婦人の負うている重荷は云い尽せぬ。 而も、ブルジョア・地主は処女会や御用雑誌・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・ ジイドによれば、人工的に過度に生産その他を強化する必要からである。その必要が現実にあるとして、それならその必要はどこから生じているのであろうか。ジイドは、信じられぬ程の偏執で、その必要は、スターリンの犠牲であり、欺かれたもの達であ・・・ 宮本百合子 「こわれた鏡」
・・・その後東宝経営者は、興業資本の利潤追及の方向を強化して、保守的な文化性の低いスター中心に作った第二組合に、安価なエロ・グロ・剣劇映画を作らせ第一組合を無活動におとしいれ数百名のくびきりを行った。 輸入映画が国外の興業資本によって日本の文・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・が、一九三六年の当時に及んで、日本古典の問題は、芸術における伝統の享受、発展への要求の範囲を脱し、一種教化統制の風潮を著しくして来た。これを無条件に礼讚せざるものは、健全な日本文化人に非ずという強面をもって万葉文学、王朝文学、岡倉天心の業績・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・に描かれているものとは全く対蹠的な社会的事情――感化院の教師と少年らの関係の内容の緊密さ、愛情、教化の方法すべてを貫いて温く流れている社会人としての共同感情が、単純にそれゆえ一層感動的に描かれているのである。 主人公となっている労働者の・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・ 日本の権力が、科学によって強化されるプロセスが、催涙ガスの使用とか、指紋採取とかいう面でおし出されていることについて、世論は無批判でありえないのである。〔一九五一年一月〕 宮本百合子 「指紋」
・・・ ただ、ジャンが機械工になりたくて仕方がなく、その方面では技術をさずけられ自信ももっているのに、教化所が一つの慣例のように農家へばかり委托する為に、ジャンの生活が破綻してゆく点を、私は心から哀れに思う。 アブデェンコの小説「私は愛す・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・ふだんから、機会ある毎に楽しむ時にも男も女も集団的にかたまって、階級としての団結力の強化をはかってる。 ――然し、ソヴェトは建設期だろ。階級としての富農や成金に対して断然指導勢力を持ってるのはプロレタリアートじゃないか。 ――そうだ・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・ 軍需工場内で、労働強化に抗して起とうとする労働者を抑圧するために、天皇制権力は昨今夢中になってやっている。記録的な分裂メーデーが今年行われた所以だが、企業内の大衆を現在の情勢ではただ上から押えつけたのではもう通用しない。逆に闘争へ立た・・・ 宮本百合子 「小説の読みどころ」
・・・鸚鵡のようにきまり文句を平気で若い女性たちがくりかえしているのをよしとするのであれば、それこそ、日本文化中央連盟がそれに向って勇ましい戦いを宣言している国民文化の模倣性、独創性の欠如そのものの実際的な強化以外の何ものでもないのである。 ・・・ 宮本百合子 「世界一もいろいろ」
出典:青空文庫