・・・なぜなら、戦争は全くある国の人民と人民とが、それぞれの国の独占資本のより強化の幻想のために殺し合わされるにすぎないことが、明々白々な事実としてわかったのだから。 戦争が、人類社会の未開な時代の遺物であり、現代でも、まだ一部の者は実力で争・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・ 工場閉鎖、賃銀不払、労働強化、三百万の失業と農業恐慌――資本家地主は遂に満蒙で帝国対! ファシズム絶対反対! ソヴェト同盟を守れと叫ぶ日だ。現実、戦争に夫や兄弟を奪われ、物価騰貴と失業に苦しめられているわれわれが手をつかねてはいられぬ・・・ 宮本百合子 「婦人と文学の話」
・・・直木三十五、吉川英治らが明治維新を「王政復古の名によって描き出し、帝国主義段階の今日において大衆のファッショ化を積極的に強化しようとはかっている。」この現実の闘争におけるモメントこそわれわれプロレタリア作家に正しい歴史小説を書くべき任務を負・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・ ソヴェト同盟をのぞく世界じゅうのプロレタリア大衆は、めいめい本国、植民地の職場で、賃銀引下げ、労働強化に反対し、ストライキし、ダラ幹征伐を行わなければならないでいる。それだのに、その小説で職場の革命的反対派を描かないようなダラ幹派プロ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・賃銀切下として、又はブルジョア産業合理化・労働強化、工場内の体育部の反動御用化として、あらわれている。 大衆はそれをどう感じているか。どうそれと闘おうとしているか。 徳永直は、「未組織工場」と「ファッショ」と二つに別れて発表された一・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 国民文学という声の中には、嘗て民衆の文学を唱えたとき、自身たちの文学的要素の歴史的な吟味に向うよりも、民衆と文学との関係では文学を外からの教化資料とし扱おうとした考えに結びついて行った文学放棄の態度も自然の成りゆきとして加わっているわ・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
・・・アジアにおける資本主義国として、西欧資本主義の利益探求の方向に同調し、その範囲で日本の資本主義を強化してゆくために、兵としての人民は重要な軍需消耗品である。自身の繁殖力によって消耗を自動的にカバーしてゆく消耗品である。日ごろは人民のつつまし・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・を利用する富農の強化などによって、驚くべき勢で農村の階級的分裂が促進されつつあった。ロシアには一千万の労働者と、その二倍の貧農が発生しつつあった。ロマーシとゴーリキイのまわりに親密な感情をもって集ったのは、クラスノヴィードヴォの村での、そう・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・何故なら景気がよい、就業率は上向きだと云っても、工場に働いている人々の賃銀の上昇には残業割増、歩増などの時間外労働強化がついているのであるし、小売物価の急激な騰貴は結局、いくらかましな工場労働者の賃金をも今日では凌いでしまっている。実質賃銀・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・明治政府の本質というものは封建的な地主と軽工業に基礎を置いた非常に薄弱な資本家とによって組立てられていたものであって、この薄弱な基礎を護って権力を強化して行こうとするために、大名と武士から成る支配者たちは、誕生第一日から侵略的な意図を持った・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫