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・・・ もう真黄に熟れて居る金柑が、如何にも美味しそうに見える。 私が七つか八つの時分、金柑が大好きで、その頃向島に居た祖母のところへ宿りに行くときっと浅草につれて行ってもらって、金柑の糸の袋に入ったのを買ってもらった。 狭い帯を矢の・・・
宮本百合子
「南風」
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・・・そのくせ、そんなにありながら英訳し伊訳して立派な恥かしくないと思われるのは民間の金貨のようだと思われる。 第二日 鶏は女房孝行な内にもどっかつんとしたところがあるけれど、鴨はどこまでもいくじなしで鼻ったらしに見える。・・・
宮本百合子
「芽生」