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・・・「銀嶺」のごときは元来実写を主題にしたものであろうが、軒のつららのものうい雫に悠久の悲しみを物語らせ、なべの中に溶け行く雪塊に運命の不思議を歌わせ、氷河の上に映る飛行機の影に山の高さを示揚させたりするのも他の例である。しかし写実を目的としな・・・
寺田寅彦
「映画時代」
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・・・荒木巍氏が、最近出版された小説集の印税代りに、出版書肆からスキー道具一式を貰い、「滑れ銀嶺、歓喜をのせて」雪上出版記念会を行ったというエピソードは、朗らかなようではあるが、私に一つのことを想い起させた。それは、明治二十何年という時代、三宅花・・・
宮本百合子
「文学における今日の日本的なるもの」