・・・ 叔母からよこした手紙にはこの次の日曜に御馳走をしてやるから来いと云うだけの用にいろいろのお飾りをつけてくどくどと巻紙半本も書いたかと思うほど長く書いてあった。 よっぽどの時間と根気がなけりゃあ。 千世子は叔母のひらった・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・「そんなに御まえくどくど云ってるもんじゃあないのさ。古は昔、今は今、サネ、わかるだろう。もうこないだ御なくなりになった天皇様が御偉くって、偉くさえ有れば平民だろうが何だろうが立派にして下さるのさ、芸人だってそうさ、天皇様の御前であの福助・・・ 宮本百合子 「つぼみ」
・・・どこから、あの全作品を通じて特徴的な、リアルで精彩にとんだ描写とくどくどしく抽象的な説明との作者に自覚されていない混同、比喩などにはっきり現われている著しい古典趣味、宗教臭と近代科学との蕪雑なせり合い、現実的な観察が次第に架空的誇大的な類型・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・しかし漱石は、そういう心持ちや心づかいを言葉に現わしてくどくどと述べ合うというようなことは、非常にきらいであったように思われる。手紙ではそういうこともどしどし書くし、また人からもそういう手紙を盛んに受け取ったであろうが、面と向かって話し合う・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫