・・・ 今日文化のあらゆる面で私たちの願うべきことは、所謂健全な文化と不健全なものと一目でわかる区分をつけるというような単純なところにはなくて、健全さも或る瞬間には不健全なものと転化してゆく、その生きた刹那の機微に対して敏感でなければならない・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・私的生活という名で区分されていた日々の生活の諸面におこっているあらゆる問題のすべては公的な性質を帯びている。そして、習慣的に公的と思われて来た社会活動の面に夥しい私的生活がまぎれ込んで来ている。つまり、今日の日本では、二つのものが、さかさま・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・ 科学は理性の主動するもの、芸術文学は感情、感覚が主として発動するものという簡単な区分の方法は、今日科学者の理解からも文学者の理解からも、もう少し複雑に、所謂科学的に高められて来ている。ファブルなどの時代では、文学に於ても十分問題である・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・自分のもとでで儲ける者としこの区分に入れている。作家はおとなしくその類別に従って来た。けれども、少し考えると妙だと思える。 作家は、大部分が出版企業に結びつけられて、真の儲けは、出版屋が吸いとっている。これは明々白々である。皮肉にいえば・・・ 宮本百合子 「作家への新風」
・・・ 彼等は、第一門に敬神、釈教を区分した。第二門に政書、職官、礼度、奏議、教育。第三門に天文、数学、博物学、医学、兵学、農学。そして、第四門に文学美術、音楽。第五門、編年、家記、伝記、考証、地理。第六門に叢書、類書等を総括している。漢書之・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・この世の中の実に夥しい女の不幸は、彼女自身、自分の肉体を知らぬこと、性慾と愛情との相互的な関係やその間の区分やを知らないことから発生して来ている。アグネスの不幸は、環境から性的なものを最も素朴な発動の形で男女の関係の間に知っていて、しかも彼・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・この本の著者の人間的感情と世界観とは、西と東との区分を踏襲しようとする保守性などを持たないことは自明である。もしこの次にこの種の労作が期待されるのであったら、一読者の希望として、東洋をありきたりの東洋篇に分けず、東西相照し合う立体的関係に於・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
・・・ 家庭でも働き着とふだん着との区分が明瞭につけられると、却ってどちらもその性能をよく活かした形で徹底されるのだろう。私たちの女の生活に向う態度そのものに、そういう区分を生れさせる弾力がなくてはならないのだと思う。昔から日本の婦人の服装の・・・ 宮本百合子 「働くために」
・・・そこには、その時分まだ批判精神は理知的・論理的・意志的なものであり、芸術性は感情的・感性的なものであるというような昔風な知情意の区分が、統一された人間精神の発動の各面という理解にまで高められていなかったことも現れているのである。 プロレ・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
・・・ ――五時からピオニェールの区分隊だ。 ワーニカはつれ立って食堂を出た。 分隊の仕事は八時ですむだろう。それから映画見にターニャを誘おうか? ワーニカは、考えながら雪道をトウェルスカヤ通の方へ歩いてった。〔一九三一年四月〕・・・ 宮本百合子 「ワーニカとターニャ」
出典:青空文庫