・・・大先生とは、むかしは、ばかの異名だったそうですが、いまは、そんなことがない様で、何よりと愚考いたします。」「治兄。兄の評判大いによろしい。そこで何か随筆を書くよう学芸のものに頼んだところ大乗気で却って向うから是非書かしてくれということだ・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・この家系で、人からうしろ指を差されるような愚行を演じたのは私ひとりであった。 × 余の幼少の折、(というような書出しは、れいの思想家たちの回想録にしばしば見受けられるものであって、私が以下に書き記そうとしている事も、・・・ 太宰治 「苦悩の年鑑」
・・・日本の解放運動が様々の歴史的負担のもとに未熟であったとして、日本の解放運動の形がそのほかになかったとき、そこに参加したことは愚行であったろうか。インテリジェンスとは、こういう急所で、はっきり事態の意味を弁別する思考の能力をさしていうのである・・・ 宮本百合子 「誰のために」
出典:青空文庫