・・・刊行責任者となり、飢饉救済委員会長として、国際的なアッピールを行った。ロシアの大衆を圧していた限りない不幸、その軛がはずされたこと及びゴーリキイ自身物心づくとからそれによって心臓をひんむかれるような苦痛を感じて来た沼のような無智、野蛮、屈従・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・それと同様にある少数者に取っては、芸術製作と宗教的救済とが一つにならなくてはならなかった。実際この特に象徴的な仏教においては、彼らが感じ得たある宗教的心境は、彼らの内に現われた時にすでに象徴的な形を取っているのである。彼らがそれを人に伝え人・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
・・・彼は自己鍛錬の苦しい道を経ないで、社会救済の自信と力とを得た人のように見える。彼はその理想の情熱と公憤との権利をもって、何の遅疑する所もなく、大胆に満腹の嘲罵を社会の偽善と不徹底との上に注ぐのである。 しかしドストイェフスキイのメフィス・・・ 和辻哲郎 「転向」
・・・一生を衆人救済と贖罪とに送って十字架に血を流したる主エスはわが主義の証明者である。要するに吾人は肉体を超越して宇宙の悲哀に恍惚たる心霊が雄壮に触れ真を憧憬し義に熱し愛に酔いて無我の境に入る時高潮に達する。Im Schnen, Im Gute・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫