・・・おやと思ってその次のやつへ足をかけるとまたぐらりとくる。しかたがないから四つんばいになって猿のような形をして上る。その上にまだ暗いのでなんでも判然とわからない。ただまっ黒なものの中をうす白いものがふらふらと上ってゆくあとを、いいかげんに見当・・・ 芥川竜之介 「槍が岳に登った記」
・・・そう迄決心したら其もよかろうと云ったら、それはぐらりとかわって声明となってあらわれた。「森山啓さんも絶版になさるそうですね」「へえ? そんな本があるのかい?」「社会主義リアリズムが気になっているそうです」 文芸家協会へ行・・・ 宮本百合子 「一九三七年十二月二十七日の警保局図書課のジャーナリストとの懇談会の結果」
出典:青空文庫