・・・恋愛がそれに価いしないと云うのではなく、正反対に、本当の恋愛は人間一生の間に一遍めぐり会えるか会えないかのものであり、その外観では移ろい易く見える経過に深い自然の意志のようなものが感じられ、又よき恋愛をすることは容易な業ではないと感じている・・・ 宮本百合子 「愛は神秘な修道場」
・・・そしてその経過を見に、度々瓶有村の農家へ、炎天を侵して出掛けた。途中でひどい夕立に逢って困った事もある。 病人は恐ろしい大量の Chloral を飲んで平気でいて、とうとう全快してしまった。 生理的腫瘍。秋の末で、南向きの広間の前の・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
・・・王子は四歳まで育って、母后の兄である祇園精舎の聖人の手に渡り、七歳の時大王の前に連れ出されて、一切の経過を明らかにした。大王は即日太子に位を譲った。新王は十五歳の時に、大王と聖人とを伴なって、女人の恐ろしい国を避け、飛車で日本国の熊野に飛ん・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫