・・・先生御自愛を祈ります。敬具。 六月十日木戸一郎 井原退蔵様 拝復。 先日は、短篇集とお手紙を戴きました。御礼おくれて申しわけありませんでした。短篇集は、いずれゆっくり拝読させて戴くつもりです。まずは、御礼まで・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・かかる原稿用紙様の手紙にて、礼を失し候段、甚謝仕候。敬具。十二月二十二日。太宰治様。わが名は、なでしことやら、夕顔とやら、あざみとやら。追伸、この手紙に、僕は、言い足りない、或は言い過ぎた、ことの自己嫌悪を感じ、『ダス・ゲマイネ』のうちの言・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・という歌を、この学校に一つしかない小さいオルガンで歌いたいと思います。敬具―― ところどころ私が勝手に省略したけれど、以上が、その国民学校訓導の手紙の内容である。うれしかった。こんどは私のほうから、お礼状を書いた。入営なさるも、せぬも、・・・ 太宰治 「新郎」
・・・読みかえさず、このままお送り致します。敬具。 この奇異なる手紙を受け取った某作家は、むざんにも無学無思想の男であったが、次の如き返答を与えた。 拝復。気取った苦悩ですね。僕は、あまり同情してはいないんですよ。十指の指差すとこ・・・ 太宰治 「トカトントン」
・・・お大事に。敬具。 太宰治 「返事」
・・・「然る処続冬彦集六八頁第二行に、『速度の速い云々』と有之り之は素人なら知らぬ事物理学者として云ふべからざる過誤と存じ候、次の版に於ては必ず御訂正あり度し 失礼を顧みず申上ぐる次第に御座候 敬具」 なるほど、物理学では速度の大・・・ 寺田寅彦 「随筆難」
・・・「復啓二月二十一日付を以て学位授与の儀御辞退相成たき趣御申出相成候処已に発令済につき今更御辞退の途もこれなく候間御了知相成たく大臣の命により別紙学位記御返付かたがたこの段申進候敬具」 余もまた余の所見を公けにするため、翌十三日付を以・・・ 夏目漱石 「博士問題の成行」
・・・あるいは御気に召さぬかと存じ候えども、御出被下候えば喜こんで室々御案内可仕候、敬具」。飯を食いながら呼鈴を押して宿の神さんを呼んだ。「とうとうあなたの方へ行く事にしましたよ。一週三十三円の下宿料なんかとうてい我輩には払えんから君の方へ行きま・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
出典:青空文庫