・・・少なくもこういう見地からこれらの二種の映画をながめてそれぞれの存在理由を認めることもできそうである。 新しい考えの生まれるためには何かしら暗示が必要である。暗示の種は通例日常われわれの面前にころがっている。しかし、それを見つけるにはやは・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・すなわち何もしなかったのと、実証的な見地からは同等になる。そういう人はなんでもわかっているが、ただ「人間は過誤の動物である」という事実だけを忘却しているのである。一方ではまた、大小方円の見さかいもつかないほどに頭が悪いおかげで大胆な実験をし・・・ 寺田寅彦 「科学者とあたま」
・・・しかし極端な自然科学的唯物論者におくめんなき所見を言わせれば、人間にとってなんらかの見地から有益であるものならば、それがその固有の功利的価値を最上に発揮されるような環境に置かれた場合には常に美である、と考えられるであろう。 この考えを実・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・そういう見地から見ると大地震が来たらつぶれるにきまっているような学校や工場の屋根の下におおぜいの人の子を集団させている当事者は言わば前述の箱根つり橋墜落事件の責任者と親類どうしになって来るのである。ちょっと考えるとある地方で大地震が数年以内・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・という唯一の見地よりしか人間の世界を展望することが出来なかった。それで彼の一神教的哲学は茫漠たるロシアの単調の原野の民には誠に恰好なものであり、満洲や支那の平野に極めてふさわしいものでなければならない。彼等の国には火山などは一つもないのであ・・・ 寺田寅彦 「札幌まで」
・・・経済関係の見地だけから社会制度を決定しようとするのもその一つであろう。 これは考えものである。 寺田寅彦 「猿の顔」
・・・最新型の器械を使って、最近流行の問題を、流行の方法で研究するのがはたして新しいのか、古い問題を古い器械を使って、しかし新しい独自の見地から伝統を離れた方法で追究するのがはたして古いかわからないのである。 今年物理学上の功績によってノーベ・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・依然として彼我の境を有して、我の見地から彼を描かなければならぬ。ここにおいて写生文家の描写は多くの場合において客観的である。大人は小児を理解する。しかし全然小児になりすます訳には行かぬ。小児の喜怒哀楽を写す場合には勢客観的でなければならぬ。・・・ 夏目漱石 「写生文」
・・・ それで前申した己のためにするとか人のためにするとかいう見地からして職業を観察すると、職業というものは要するに人のためにするものだという事に、どうしても根本義を置かなければなりません。人のためにする結果が己のためになるのだから、元はどう・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・ この見地より世の中を見わたせば面白いものです。こういうのは私一人かも知れませんが、世の中は自分を中心としなければいけない。尤も私は親が生んだので、親はまたその親が生んだのですから、私は唯一人でぽつりと木の股から生れた訳ではない。そこで・・・ 夏目漱石 「無題」
出典:青空文庫