・・・兵隊であったかと感じる程、身じろぎもせず、げんなりした風もなく突立っている。見て、寒い恐怖に近いものが感じられた。男は、峻しい冷静なその台の番人で、香水と称す瓶のなかみは、可愛い好い香など決して仕ない色つけ水でありそうな気がする。万一、香水・・・ 宮本百合子 「粗末な花束」
・・・話をきいた大伯母がげんなりした様に、 それなら、その小説屋さんとか云うものもいけず、ねえ。と云ってグタグタといつもの様に首を振った時何ともつかない面白い様な可笑しい気持がして笑が喉元にグイグイとこみあげて来た。 そんなに・・・ 宮本百合子 「千世子(二)」
・・・とさもげんなりした様に云った。 此の時位私の心に彼に対して憐みの湧いた事はなかった。 今までは叔父と云えばどうしても自分より偉く強く、どんな時でも困る苦しい事はない人だと云う様な気がして居たのが根底から引っくり返されて仕舞っ・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・一般の読者の中には、現実生活の重苦しさにげんなりした心持をプロレタリア文学の闊達と称せられない有様に結びつけ、その評言を当っているように思い、つづいて昨今青野季吉氏によっていわれている闊達自在論をそれなりによしと感じるひとがあるかも知れない・・・ 宮本百合子 「プロ文学の中間報告」
出典:青空文庫