・・・その後東宝経営者は、興業資本の利潤追及の方向を強化して、保守的な文化性の低いスター中心に作った第二組合に、安価なエロ・グロ・剣劇映画を作らせ第一組合を無活動におとしいれ数百名のくびきりを行った。 輸入映画が国外の興業資本によって日本の文・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・ターキーは、もっと明るくて健康であり、若い娘の扮する男役の効果については、彼女自身が自覚するより先にぬけ目ない興行者が知っていたのであったろう。男のような、それで実は若い女であることが若い娘に安心して熱中出来るゆとりを与えることは明瞭である・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・こういう芸術味のある歌も、営利の為につまらぬ興業師などに利用されて、歌の上手な婦人で思わぬ不幸な運命に陥いる事があります。アイヌの歌を真に理解して、それに興を覚えて聞くならよいでしょうが、見世物のようにされては可哀想です。 彫刻など・・・ 宮本百合子 「親しく見聞したアイヌの生活」
・・・特に電気工業、機械、鉱業へ婦人の進出はこの頃ソヴェト同盟の目立った現象だ。 社会主義社会で、つまり男女同一労働に対して同一賃銀を実施し、しかも現実的な母性保護が完全に行われるところでこそ、男女共学が本ものとして行われるのは自明なことだ。・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・アメリカやアイルランドの小劇場は興業資本にたいして、金儲け専一でないほんとうの劇場、ほんとうの演劇をもちたいという希望をもつ人々によって創られたものでした。出版事業にひきずられっぱなしでない出版をして、たとえば、ヴァージニア・ウルフ夫妻が中・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・られたドイツの軍人たちの傷けられた名誉心と結合させ、ドイツ民族の名誉恢復、復讐の期待というものを、不幸なドイツの人々の心にしみこませて行ったのが、第一次大戦のときに生れたドイツの軍需成金、科学・工業・鉱業界の親玉たちであった。そこへこの舞台・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・て踊るのだが、あれほど踊りこそ天職と思っている青年がその宝を見出されないで喜劇役者をやっている悲しさというか、その芸術家として必然と思われる哀愁が、初めの部分の踊りかたではちっとも描き出されていない。興業師のマンネリズムがカッスル・ウォーク・・・ 宮本百合子 「表現」
・・・中にも西洋の誰やらの脚本をある劇場で興行するのに、木村の訳本を使った時にこのお極りの悪口が書いてあった。それがどんな脚本かと云うと、censure の可笑しい程厳しいウィインやベルリンで、書籍としての発行を許しているばかりではない、舞台での・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・しくしたと云って、帰ってから尋ねて来る同族の人も、秀麿は随分勉強をしているが、玉も衝けば氷滑りもすると云う風で、上流の人を相手にして開いている、某夫人のパンジオナアトでは、若い男女の寄宿人が、芝居の初興行をでも見に行くとき、ヴィコント五条が・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・赤や青や黄な紙に、大きい文字だの、あらい筆使いの画だのを書いて、新らしく開けた店の広告、それから芝居見せものなどの興行の広告をするのである。勿論柱はただ一本だけであって、これに張るのと、大門町の石垣に張る位より外に、広告の必要はない土地なの・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫