・・・一つでも、その半片でも、人間が受けている、或は受けなければならない苦難を知ると、その一点を中心として四囲に発散している種々の光彩を見、感じる事が出来るように成るのではあるまいか、私の魂が粗野で、先頃までは鈍かった感触が此頃漸々有るべき発育を・・・ 宮本百合子 「追慕」
ツワイクの「三人の巨匠」p.150○ワイルドがその中で鉱滓となってしまった熱の中でドストイェフスキーは輝く硬度宝石に形づくられた。○災厄の変化者、あらゆる屈辱の価値の変革者としてのドストイェフスキー。○彼は自己・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・失業救済事業公債が二千七百八十万円と内定し、上野ではプロレタリア美術展がひらかれてる。〔一九三〇年十二月〕 宮本百合子 「ニッポン三週間」
・・・彼は金の融通の切迫した必要から銀行の組織に精通し、パリじゅうの高利貸と三百代言を知り、暫くではあるが公債のためにサン・ラザールの監獄へぶちこまれた。再び狼の爪につかまれぬためには、変名して手紙を受とったり、住居を晦したり、辛酸をなめた。母親・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ ツワイクがドストイェフスキー論の中に言っているとおり、「ワイルドがその中で鉱滓となってしまった熱の中でドストイェフスキーは輝く硬度宝石に形づくられた。」 巨人の檻 バルザックは、徹底的に、雄渾に、執拗・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・然し現代風俗として見るとき、これらの現象はこれだけで切り離せぬもので、百円迄のボーナスも一割は公債で。オール・スフ。眼鏡のつるに到る金の申告。体位向上徒歩奨励、幼児保健の問題、戦没者の母子寮の設立などと全く背までくっついていて離れられない双・・・ 宮本百合子 「風俗の感受性」
・・・奥さんは手元にあるだけの株券、公債、銀行通帳、宝石の入った装身具類などを悉く簀子の処へ持ち出し、「これだけ財産があるんですから、本当に、御迷惑はかけませんよ、――だからどうぞ今日から親類になって下さい、……ね、私達そりゃあ淋しく暮してい・・・ 宮本百合子 「牡丹」
・・・幸福主義というのは、何を意味するものなのか、人間の幸福とは、はたして、安閑と公債の利子で生活して行く事なのか。 宮本百合子 「無題(二)」
・・・と、細君を失くした医者の後妻の縁談までを、一旦ことわりつつ「あんなに急にことわることはなかったのかもしれない。」とさえ思う。「しかし、もし結婚するのならそんな知らない人よりも……」気心も分っている公荘と、「前のことなんかすっかり水に流して」・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・その金で、戦時公債償却をするということである。それから軍需生産者に、補償金として支払われるということでもある。公債を私共の家庭で、どれ程持っているだろう。解説者は、大衆の中には一割位しか保有されていない公債であると言った。あとは大銀行、大企・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫